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2013年12月23日

小さな店だった

あれは私が高校3年生の頃か、高校を卒業したての頃か、
自分でクルマを運転してあちこち行けるようになったので
以前から気になっていた店に入ってみたことがある。

その店は、まだ発展途中の新興住宅街の中にあり、
空き地ばかりが目立つ殺風景な場所に、ぽつんと建っていた。

小さな、小さな店だった。
看板には「SALA」と書かれていた。


日本語で「喫茶店」とか「コーヒーショップ」とかは
どこにも書かれていなかったので、気にしていなければ通り過ぎてしまう。

外壁が何色のペンキで塗られていたのかは思い出せないけど、
全体的に50年代のアメリカっぽいパステルカラーだった。

でも、かわい過ぎない、甘過ぎないパステルカラーだったから
お子様の店には見えなかった。

建物は、どこか外国の家みたいなシンプルな造りで、
表にはピケットフェンスがあって、狭い庭があって、
小さな薔薇か何かの花が咲いていた。

アンティークっぽいガラスのランプシェードや、
ペンキの塗られた木のカウンターや、
店の奥の壁に見える等身大マリリンモンローのイラストボードが、
それまで私が知っていたどの店とも違う雰囲気を醸し出していた。

こんな空間に、ずっと座って、リラックスして、お茶を飲んだり、
本を読んだり、音楽を聴いたりして過ごしたい、と思わせるような
本当にカッコイイ、素敵な店だった。

テーブルは4つくらいしかなかったと思う。
後は、カウンターにスツールがいくつかあったくらいで、
20人も入れば満席になってしまうような店だった。

ちょっとアーティストっぽい雰囲気の常連が通うような店だった。

でも、その店を本当に引き立てていたのは、センスの良いインテリアや
カセットデッキから流れてくる洋楽ではなくて、
そこにいた、美しくてチャーミングな女性店主だった。

私よりずいぶん年上の彼女は、たぶん30代前半だったはずだけど、
小柄で美人でセクシーで、とっても魅力的なひとだった營養素

黒くて長いソバージュの髪の毛も、ちょっと日本人離れした小さな顔も、
真っ赤なルージュを塗った薄い唇も、華奢な体つきも、
ティーンエイジャーだった私には、すべてが完璧な「大人の女」に見えた。

私はそこで「ピンクカルピス」というこじゃれたドリンクを飲んだ。

カルピスにイチゴシロップを入れてピンク色にしただけの
なんてことない飲み物だったけど、高校生にはグッとくるような
かわいいネーミングだった。

私はその店と店主にとても心惹かれた。
だけど、まだ若過ぎてぎこちない自分とはあまりにも違う世界だから、
もう少し大人になってからまた来ようと思った。

20歳を過ぎた頃からその店に時々通うようになった私は、
だんだん素敵な店主と親しくなり、
彼女のユル・ブリンナー似のご主人がドイツ人と日本人のハーフで、
デザイナーで、ハーレーに乗っていることも知った康泰

店主の名前はミエコさんで、音楽が好きで、ちょっと天然で、
化粧品を忘れて店に来たら、ペン立てからサインペンを抜き取って
アイライナーにしてしまうような大胆で個性的な人だった。

ふたりは、何から何までイカしたカップルだった。

21歳くらいの頃だったか、ある日私はミエコさんに呼び出されて
改まった顔で「お願いがあるの」と言われた牛欄牌奶粉
  


Posted by nancc at 12:13Comments(0)